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大学院生 エッセイ

大学院生 エッセイ

哲学・思想サブプログラム博士後期課程 栗﨑 路

私が研究している問題は、日本におけるプロテスタントキリスト教会の無牧化です
日本社会の高齢化に伴い宗教指導者や信徒も高齢化しており、地域格差の拡大も相まって、宗教集団がこれまでのあり方を保てなくなっている状況が見受けられます。私は、特にキリスト教プロテスタント派に注目して、牧師のいない(無牧)教会が増えている現状を明らかにしようとしています。
この大学院に来て一番良かったと思うのは、教授や事務の方々が丁寧にサポートしてくださることです。私は修士の学位をキリスト教(神学)の分野で取得したので、博士後期に入って初めて宗教学を学んでいます。その点は苦労していますが、教授がサポートしてくださいますし、必要なときは相談に乗ってもらっています。私は現在40代で仕事をしており、3人の子どもがいます。時間のやりくりが難しく行き詰まるときもありますが、それでも入ってよかったと思います。
これから大学院進学を考えている人にアドヴァイスさせていただくとすれば、「チャレンジせずに後悔するより、一度やってみるのはいかがでしょうか」ということです。仕事をしながら学ぶのは確かに楽ではありません。それでも私はチャレンジして良かったと思っています。そして、そのようにチャレンジする社会人を受け入れる体制がここにはあると思います。

 

哲学・思想サブプログラム博士後期課程2年 橋本 高志

私は、宗教法人立正佼成会に所属し、(公財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会で仕事をしています。宗教とともに、IT会社でプログラマーとして働いていたこともあり、早いスピードで進化している科学技術についても関心が高いです。科学技術によって、宗教がどのように変化するのか、また宗教界の末席に身をおく者として、どのように関わればよいのかを考えたくなり、2020年4月に筑波大学大学院哲学・思想SP博士後期課程へ入学しました。現在は、宗教的感情と人工知能の感情分析について研究しています。
ロンドン大学で修士号を取得してから筑波大学大学院へ入学するまで8年ほど経っていたので、私にとって博士号取得は新たな挑戦で、アカデミックな思考に慣れるのに苦労しています。しかし、確固たる知識と幅広い教養、柔軟な発想を兼ね備えるのに、筑波大学大学院のプログラムは私にとって最適で、先生方のご指導に助けられ、学友の研究や発言に影響を受けながら、研究を進めることができています。
また、仕事をしながら研究する上で、時間が足りないことも苦労の一つとしてあげられます。しかし、東京都杉並区在住のため、なるべく大学へ行かなくて済むように先生方や事務の方には柔軟に対応して下さり、また勉強時間を設けられるよう妻にも助けられています。環境をしっかり整えて頂いておりますので、博士号取得へ向かって、これからも研究に励んでいきたいと思います。

 

哲学・思想専攻 一貫制博士課程5年 布施 京悟(右の写真はゼミ風景)

私が研究している問題は「なぜ人は自分らしく安心して生きることがなかなかできず、自分を押し殺したり他者を憎んだりするのか、それを解決するにはどうすればいいのか。」というものです。アドルノ/ホルクハイマーの『啓蒙の弁証法』を通してこの問題を考えています。
また大学院での生活費は、奨学金と授業料免除を利用し、アルバイト(1日8時間を週2日)とティーチングアシスタント業務で補っています。
この大学院に来て一番良かったと思うのは、自分の人生が大きく変わったことです。私の所属している研究室では、教員-院生や先輩-後輩のような立場や関係性を超えて、テキストやそれぞれの考えについてお互いに遠慮なく対話します。すると自分が持っていた考えがひっくり返り、新たな視点に出会い、自分の目に映るもの(本の内容だけでなく、自分が見ている世界や常識、また自分自身)が全く違うように見えるようになります。お互いにあだ名で呼び合い、研究に限らず生活のことや個人的な悩みなども一緒に考えることもあります。以前は人生に諦めしかありませんでしたが、前向きな気持ちを取り戻すようになりました。一人で勉強し考えているだけでは、こうした経験や、自分にとって重要なテーマも見つからなかったと思います。

 

哲学・思想専攻 一貫制博士課程5年 丸山 徹(上の写真の左上)

私が研究している問題は、「「永劫回帰」とはどのようなものであるのか?」というものです。
「今この瞬間は無限回繰り返してきたし、これからも無限回繰り返し続ける」というニーチェの「永劫回帰」の概念は、時間というものを一方通行の数直線としてとらえる私たちの常識的な感覚からはかけ離れたものなので、これを理解するのは大変難しいです。しかし、私の研究のきっかけである、「「いつか必ずやってくる死」への恐怖をどのように克服するか?」という問に応えてくれる道として、ニーチェがたどり着いた真の時間・人間・世界の姿について研究しています。
この大学院に来て一番良かったと思うのは、先生や大学院生と本気で議論することができることです。ここには、先生-学生、友達同士という関係に収まってしまうことなく、また単なる学問的知識についての話題に終始するのでもなく、テキストやお互いの問題意識について、フラットに、本心で、満足するまで対話することができる環境があります。そのおかげで、一人で黙々と研究する、という大学院生活では決して得られなかったであろう沢山の驚きや気づきを毎日与えられています。
大学院での生活費は、週2~3回(一日4~5時間)のアルバイトと、大学院や学群の授業のTA(ティーチングアシスタント)、日本学生支援機構の奨学金などで工面しています。その他、授業料免除制度など金銭的なサポートも充実しているので、「これを研究したい!」「もっと知りたい!」という問をたずさえて、ぜひ哲学・思想SPに飛び込んでみてはどうでしょうか。